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「特定技能」という新しい在留資格について

日本政府は日本における人材不足の問題を解消するため、近年積極的に外国人労働者を受け入れてきました。

その一環として、2019年4月1日に「特定技能」という新しい在留資格が増設されました。法務省のホームページによると、在留資格「特定技能」の目的は下記の通りです。

法務省HP

簡単に言えば、日本国内で日本人労働者の確保が難しい職種、介護、ビルクリーニング、外食といった14の分野に対し、外国人を特定技能労働者として受け入れて、人材不足問題を解消しよう、というのが主な目的です。

詳しい内容は法務省のHPや詳しい解説をしているサイトがありますのでそちらをご覧ください。

ここでは、本制度に対する私の個人的な意見を述べたいと思います。

 

評価できる部分

■やっと単純労働者の受け入れが解放された。

今まで日本は外国から単純労働者を受け入れない方針をとってきました。

ですが、近年では人が集まりにくい職種の企業では募集をしても人が集まらないという状況が続いており、人材不足が原因で事業が継続できなくなる企業も出てきました。

これは企業にとって非常に深刻な問題です。

そのため、一部の企業ではやむを得ず外国人の「留学生のアルバイト」「技能実習生」「技術者」を単純労働させる、というケースが相次ぎ、大きな問題となりました。

今回職種は限定されているものの、「特定技能」の増設で、外国人の単純労働者の受け入れが部分的に解禁されたことになります。

対象となった14分野においては、人手不足が解消されるのではないかと期待しています。

なお、これも個人的な意見ですが「単純労働」という言葉の表現にはちょっと違和感を感じています。

どの分野においてもそれなりの「技術」は求められます。

一見単純な仕事に見えても、実際現場で働くためには様々なスキルが必要です。

そのため、「単純労働」と「単純でない労働」を区別するのは不可能だと思っています。

「単純労働=誰でもできる仕事」というイメージを持ってしまいがちですが、「単純」な仕事なんてないのです。

■組合の独占がなくなる

今まで外国人を受け入れると言えば、主に技能実習生の事を指していました。

技能実習生の受け入れは必ず組合を通さないといけません。

この仕組みはある意味、組合の独占市場となってしまっている状況です。

1つの機関が市場を独占しているという状態は、決して健全な市場とは言えません。

ですが今回、特定技能の窓口は組合ではなく、「登録支援機関」になります。

組合と違って、希望すれば誰でも立ち上げて登録できるようになりました。

組合の「独占市場」から誰でも参入できる「自由競争」に変わったのです。

適度な競争は市場を健全に活性化させます。

健全な質のよい機関は生き残り、そうではない機関は自然に淘汰されるでしょう。

この市場の健全化によって、健全な外国人の受け入れ体制が期待できます。

 

■適切な管理/監視体制が行われる

制度はスタートしたばかりですが、法務省と入国管理局のホームページに記載されている資料を見る限りでは、入国管理局がしっかりと監視・管理を行うようです。

 

国がしっかりと管理、監視を行うことで

「外国人を都合良く利用しよう」

と、適当に外国人労働者を受け入れて低賃金・重労働を課してきたような悪質な企業は減るのではないかと考えています。

 

 

疑問を持っている部分

■登録支援機関について

特定技能在留資格で入国してくる外国人に対して生活支援するのは組合ではなく先述した「登録支援機関」です。

組合と違って誰でも登録支援機関として申請できるようになっている点自体は、自由競争の観点から評価しております。

ですがその反面、誰でも登録できるような状態で、「登録支援機関」の質は維持できるのだろうか、という懸念もあります。

というのも、外国人の生活を支援するためにはその国の人、言葉、文化をきちんと理解し、外国人が異国の地でも安心して働けるように適切なサポートを行う体制が必要です。

例えばベトナム人を受け入れる支援機関のスタッフがベトナム語を話せない、となった場合、ベトナム人は安心して働けるでしょうか。

誰でも支援機関に登録できるとなると、このような利益目的で正しい知識やサポート体制を持たない適当な支援機関が増えるのではないかと心配しています。

受け入れる側の企業は「支援機関」という法務省お墨付きの機関を信用して労働者を受け入れます。

事前に支援機関に対して厳しいチェックを入れる企業は少ないでしょう。

従ってもし、支援機関の質が悪かった場合、問題の多くは「受け入れ後」に発生してしまうのです。

そうなると問題解決も難しくなります。

そうならないよう、質の高い、信頼できる支援機関を利用し、事前に問題が起きないようにしておかなければいけません。

ですが、質の悪い支援機関が増えることで、この点がおろそかになるのではないかと心配しております。

できれば、登録支援機関には一定の条件を設けた方がいいと思っています。

最低でも支援対象者が話している言語を通訳できるスタッフは必須です。

また、両国の文化を理解できるスタッフも必要です。

支援機関登録の際の条件に、この2点は絶対に欠かしてはいけません。

 

■技能実習生に対し無条件で「特定技能」を与える件について:

日本に来た技能実習生に対して、無条件で特定技能の資格を与えることにも疑問を覚えます。

私自身も多くの技能実習生の管理・通訳をした経験があります。

技能実習生の中には、仕事ができる方もいれば、できない方もいます。

また、3年ほど日本で生活していれば「ある程度」日本の習慣等に慣れ、日本語も覚えるのが普通ですが、仕事同様、3年間生活していても全然日本語を覚えない子もいます。

「特定技能」という資格の質を保つため、仕事の技能、日本語が一定水準に達しない方には「特定技能」を与えるべきではないと思います。

逆に日本で生活したことがなくても、母国で努力して日本語ができるようになった方などに特定技能を与えるほうが「公平」ではないでしょうか。

 

■「学歴の条件なし」

特定技能在留資格の対象者は以下の通りです。

・18歳以上

・日本語と技能試験に合格

上記の条件を満たせば誰でも資格を得ることができます。

ですが、私はこの2つの条件にもう一つ、「一定の学歴」を条件に含めるべきだと思っています。

私は学歴で人を差別するつもりはありませんが、一般的に学歴・学力が低ければ低いほど問題を起こしやすい傾向がある事は確かです。

また、学力が低いと理解力にも限界があるため、問題が発生した場合解決が難しくなります。

決して高学歴である必要はありません。

ですが、「最低限の学歴」は条件に必要だと私は思っています。

 

■偽造書類

もう一つ私が懸念している問題に偽造書類があります。

現在法務省と入国管理局のホームページに記載している書類によりますと、日本語と技能の試験は海外でも行われるようです。

日本の国内で行われる場合は、日本の厳しい監視システムによってある程度試験を公正に管理し、「人材の質」が維持できると思います。

日本は世界的に見て、不正に対して非常に厳しい国だからです。

ですが、海外で行われる場合、この「人材の質」の保証が難しいです。

国にもよりますが、海外では日本と違って、コネ、ひいき、賄賂などによって簡単に試験に通ったり、書類の偽造が行われる可能性があります。

そのため、海外で行われる日本語と技能試験の管理も解決しなければならない課題の一つになっています。

今回、特定技能について私の個人的な見解を述べました。

私は決してこの制度を否定しているわけではありません。

制度自体は日本の企業にも海外の労働者にもメリットのある制度ですし、高く評価しています。

ですが、特定技能は出来たばかりの制度でまだまだ成熟していません。

 

そのため、今回書いたようなまだまだ解決すべき問題や課題も残っています。

特定技能者を受け入れる企業におかれましては、今回の事を踏まえ慎重に「登録支援機関」を選んでいただきたいと思います。

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