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外国人の「人権」について

外国人は、どうしても日本人と比べて差別を受けることが多くなる現状があります。就職転職の際に差別されたり雇用条件が悪くなっていたりする例もみられます。

実際に外国人を雇い入れる際、日本人と比べて低い条件で雇用しようと考える企業もたくさんあるのではないでしょうか?

しかし外国人にも「人権」が認められるので、不当に悪い条件での取扱いをすることは許されません。

以下では外国人にどのような人権が認められるのか、解説していきます。

 

  • 日本では、外国人にも転職の自由など人権が認められるのか?
  • 外国人にはどこまでの人権が保障される?

 

 

1.外国人に認められる人権

そもそも外国人に人権が認められるのでしょうか?

日本国憲法は「国民に権利を保障する」と規定しており、外国人には権利が保障されないようにも思えます。

しかし憲法の解釈は「性質上日本人にしか適用されないもの以外は、在日の外国人にも人権が認められる」となっています。

つまり、選挙権などの日本人を前提とするものは外国人に認められませんが、それ以外の自由に関する権利などの基本的な人権は外国人にも認められるのです。そこで労働基準法や民法などの法律も外国人に適用されます。

外国人だからといって、どのような不当な扱いをしても良いことにはなりません。

以下では、外国人にどのような権利が認められるのか、個別に説明していきます。

 

2.職業選択、転職の自由

憲法は「職業選択の自由」を認めているので、外国人であってもどのような仕事をするか自分で自由に決められます。

今の会社における条件が悪ければ退職して別の会社に転職できます。無理矢理引きとめて働かせることはできません。

 

3.労働基準関係法令の適用

日本では労働基準法や労働安全衛生法など、労働者の権利を守るための法律がたくさん整備されています。これは憲法上の労働者の権利を具体化したものです。これらの労働基準法令は外国人にも適用されるので、雇用企業はきちんと法律を守る必要があります。

たとえば賃金や残業代不払いは許されませんし最低賃金も保障されます。有給や休憩時間の権利もあるので、不当な扱いをしてはいけません。

4.居住場所選択の自由

外国人にも「居住場所選択の自由」が認められます。たとえば会社の寮などに強制的に住まわせることはできません。本人が「寮を出て別の場所に住みたい」と言うのであれば、認める必要があります。

5.人身の自由

憲法では「人身の自由」が認められます。これは監禁や強制労働をさせられない自由です。外国人労働者をある一定の場所に監禁して、不当に低い条件で労働を強制すると人身の自由の侵害となるので、注意が必要です。

6.財産権

憲法では「財産権」という権利が保障されています。これは、国民が自分の財産を所有し、むやみに没収されたり侵害されたりしない権利です。

外国人にも財産権が認められるので、会社が外国人労働者の所持品を勝手に留置することは認められません。たとえば本人が望んでいないのにパスポートやその他の重要なものを預かって返さないと違法です。

本人の所持金や通帳などを預かる行為にも基本的に問題があると考えましょう。

7.平等権

日本ではすべての国民が平等に取り扱われます。老若男女、すべて同じように扱われるので、たとえば男女差別や思想信条などによる差別は許されません。外国人のケースでも、基本的に平等権は適用されます。

ただし選挙権などの日本人であることを前提とする権利は認められませんし入管に各種の報告義務があったり滞在のために要件があったりするので、一定範囲では日本人と異なる取扱いを受けます。

8.信教の自由

憲法は、国民に「信教の自由」を保障しています。つまり誰でもどのような宗教でも信じて良いということです。外国人の場合、日本とは全く異なる宗教を信じていることもありますが、それを強制的にやめさせたり嫌がらせをしたり、宗教を理由に差別的な取扱いをしたりしてはなりません。

ただし過度の宗教活動が仕事の支障になる場合には、支障にならない範囲の活動にとどめるよう指示し、対応させることは可能です。

9.表現の自由

日本では、すべての国民に「表現の自由」が認められます。これは、自分の意見を自由に発信して良い権利です。たとえばネット上で自分の言いたいことを書き込むのは表現の自由のわかりやすい例です。

外国人にも表現の自由が認められるので、ブログなどに日本語でその日あったことや会社での様子などを書くのも基本的に自由です。

会社が労働者に「ブログは禁止」などと言うことは許されません。

ただし会社に対する名誉毀損的な内容を書くことまでは認められません。表現の自由があっても、他者の権利を侵害することは認められないからです。

労働者があまりにひどい会社の悪口を書いているようであれば、注意してやめさせましょう。

10.プライバシー権

憲法は、国民に「プライバシー権」を認めています。プライバシー権とは、自分の私生活上の秘密や個人情報をみだりに開示されない権利です。

外国人にも、当然プライバシー権は認められます。

たとえば企業が収集した外国人労働者に関する個人情報や家族関係、出身国などを漏えいすると企業の責任を問われます。

また外国人従業員に対してプライバシーを根掘り葉掘り聞き出すのも違法となる可能性があるので、やめましょう。

 

以上のように、外国人労働者にも基本的人権が保障されます。軽く考えていると企業側が違法となってしまう可能性もあるので、これから注意してみて下さい。

 

ライター 福谷陽子

過去に10年間弁護士経験があり、現在はその法的知識を活かしてライターを行っている。労働関係や外国人の人権問題に詳しく、現役時代には多くの労働関係の交渉、訴訟などを取り扱っていた。現在も各種の労働関係メディアを始めとして、不動産や相続、交通事故などのメディアで執筆活動を続けている。

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